産科と婦人科
精選された情報満載読者各位にとって欠かすことができない情報をタイムリーに提供. 「生殖おもしろ話」・「外界事情」・「青い血のカルテ」・「産婦人科診療 私のコツ」など連載も充実.
抜群の読みやすさオール2色刷り.一目でキーポイントがわかるレイアウト.
充実したラインナップ日常診療の場で即役立つ「増刊号」を年各1冊発行.日進月歩で激変する医学界のキーワードを読み解き,読者各位の壮大な負託に応えるべく「産科と婦人科」は微力を注ぎます.
2021年 Vol.88 No.8 2021-07-16
卵巣 Up to Date
定価:3,190円(本体価格2,900円+税)
企画 大須賀 穣
1.卵巣の形態学 / 林 正美・他
2.卵胞発育 / 河村和弘・他
3.卵子成熟,排卵に関する最近の知見 / 吉野 修・他
4.黄 体 / 田村博史・他
5.閉経期以降の卵巣機能 / 髙橋俊文・他
6.多囊胞性卵巣症候群 / 原田美由紀
7.早発卵巣不全 / 髙江正道・他
8.ターナー症候群と卵巣機能 / 澤井英明
9.生活習慣,環境と卵巣機能 / 五十嵐敏雄
10.卵巣老化とPGT—A / 岩佐 武・他
11.黄体ホルモン併用卵巣刺激法 / 竹重勇哉・他
12.AMH値による個別化卵巣刺激法 / 川井清考・他
13.卵巣過剰刺激症候群 / 黄 海鵬・他
14.Ovarian Stimulation for IVF/ICSI ESHREガイドライン / 江頭活子
15.COVID—19と生殖医療 / 太田邦明・他
連載
若手の最新研究紹介コーナー
Immune checkpoint inhibitors(anti PD—1/PD—L1 antibody)could be effective in dedifferentiated endometrial carcinoma / 福島瑠璃子
総説
2017年日産婦登録データから紐解く本邦のART / 福田淳一郎・他
症例
胎児腹腔外臍帯静脈瘤および非典型的な超音波像を呈した間葉性異形成胎盤の1例 / 小西久也・他
卵巣なくして産婦人科は語れないはずなのに,卵巣そのものに思いを巡らせることが少なくなっていると感じます.日常診療では,腫瘍がなければ大丈夫,ホルモンが足りなければホルモン補充すれば大丈夫,卵子がとれれば妊娠は大丈夫,などと卵巣そのものがないがしろにされていませんでしょうか? 本特集は生殖器官でありかつ内分泌器官である卵巣について最新の理解を深めていただくために企画しました.読者の皆様がご存知の通り,卵巣は出生時に約200万個の卵子を所有していますが,生後は新たに卵子がつくられることはなく,50年程度ですべて消費されてしまいます.人生の半分近くで卵巣機能がなくなるわけですが,それまでの卵巣ホルモンの全身への影響は残りの人生にもかかわってきます.なぜこのように不思議な臓器がつくられたかは神のみしか知るよしもないと思いますが,不思議を解き明かすのは人間の作業です.卵巣のダイナミズムに魅せられて古来より多くの研究者が卵巣の謎に挑戦してきましたが,現在もなお挑戦は続いています.近年も新たな知見が蓄積され,卵巣に関連する疾患に対する新たな展開もみられています.
本特集では卵巣の生理と腫瘍性病変以外の病理について第一線でご活躍中の専門家の先生方に最新の知見をまとめていただきました.最初に卵巣の生理について卵胞周期にしたがってご解説いただきました.次いで,各種病態について基礎的・臨床的側面よりご解説いただいております.最後に,体外受精における調節卵巣刺激の最前線をご解説いただくとともに,COVID—19が生殖補助医療に与えた影響を追加してあります.調節卵巣刺激の進化は卵巣に対する理解の進化の反映でもありますので,生殖補助医療に携わっていない読者にも有益な情報を与えるものと考えております.本特集を通して卵巣を新たな視点から見つめ直していただき明日からの診療にお役立ていただければ,編者として幸甚でございます.
(東京大学大学院医学系研究科産婦人科学講座 大須賀 穣)