診断と治療
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わが国の内科総合誌のパイオニアで,数ある総合誌のなかでも抜群の安定性と評価を誇る. 新進気鋭の編集委員を迎え,最新情報を盛り込み読みごたえ満点. 連載「視診で見抜く!皮膚疾患の診かた」「注目の新薬」など. 増刊号も毎回シャープな切り口と実際的な内容が大好評. 2色刷のビジュアルな誌面. |
2021年 Vol.109 No.11 2021-11-05
新型コロナウイルス感染症 理解と対策の現状
定価:2,860円(本体価格2,600円+税)
ねらい 柳元伸太郎
◆総 論
わが国の新型コロナウイルス感染症の公衆衛生対策を振り返る 和田耕治
新型コロナウイルス感染症の疫学 尾島俊之
新型コロナウイルス感染症の臨床像 君塚善文,他
新型コロナウイルス感染症に関する法制度 米村滋人
◆各 論
ウイルス学 前村 忠,他
医療機関における感染対策―個人用防護具マスクの運用― 大西一成
「新しい生活様式」とこれからの日常生活 三鴨廣繁,他
PCR検査,抗原検査 飯田慶治,他
抗体検査と免疫学 涌井昌俊
新型コロナウイルス感染症の薬物治療 渡部克枝,他
人工呼吸管理,ECMO 星野耕大,他
COVID-19後遺症 宮里悠佑,他
ワクチン開発 中神啓徳,他
◆トピックス
海外渡航手続きと陰性証明書 大植鉄也
新型コロナウイルス感染症の変異株(α株)の伝播と自然史に関する数理疫学的な最新知見 小林鉄郎,他
積極的疫学調査,濃厚接触者 吉川悦子
新型コロナウイルス感染症対策の国際協調とWHOの対応 茅野龍馬
連 載
◎心電図は1枚の窓
労作時の胸苦しさを主訴に受診した70代の女性 金森健太
◎注目の新薬
コミナティ®筋注〔コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)〕 柴原理志,他
◎医療裁判の現場から
専門外の疾患についての専門医紹介義務が認められた事例 太田善大
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は2019年12月に最初の患者が中国で報告されたが,その後,瞬く間に世界中に広がり,わずか2年足らずで全世界で2億人以上が罹患している.わが国でも2020年1月には最初の患者が報告され,同年4月には最初の緊急事態宣言が出されるに至っている.2021年9月時点では国内の累計感染者数は170万人を超え,1万7,000人以上が亡くなっている.新規感染者数の急増と減少を繰り返しながら今日に至っているが,感染性の高い変異株が出現するなど,いまだに感染がおさまる気配がない.
2020年末から海外ではワクチン接種がはじまり,国内でも全人口の7割ほどが少なくとも1回のワクチン接種を受ける状況となった.有効な抗ウイルス薬など治療における特効薬がいまだに開発されていないなかでワクチン接種が感染対策の決め手になると期待されているが,接種率の伸び悩みやワクチン接種者で発生するブレークスルー感染の問題,ワクチン効果の数か月程度での減弱など,ワクチンも万能とはいかない状況で,2021年7月からのいわゆる第5波を迎えたあとも終息が見通せない.
一方で,世界中の様々な分野の研究者,保健当局などが新型コロナウイルス対策に取り組むなかで日々の感染対策,患者診療にも有用な様々な知見が蓄積されてきている.今回の特集ではCOVOD-19のこれまでを振り返るべく,疫学的特徴,ウイルス学的知見やそれらに基づいた感染対策のあり方,疾患としてのCOVID-19の臨床像,検査,治療,ワクチンなどに関することを各分野の専門の先生方にまとめていただいた.また,COVID-19では避けて通れない感染症法上の届出や積極的疫学調査など行政手続きに関する事項,実態,課題についてもページを割いている.
症状がない感染者も多数いるとみられ,国内でわかっているだけでも全人口の1%以上が罹患していることから,今自分の目の前にいる患者がCOVID-19かもしれない,というのはかなり現実味を帯びた想定と考えるべきであろう.こうした状況のなかで日々患者に向かい合っている先生方に,“Withコロナ時代”の診療に役立つ情報を提供できれば幸いである.
東京大学保健・健康推進本部
柳元伸太郎