診断と治療
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わが国の内科総合誌のパイオニアで,数ある総合誌のなかでも抜群の安定性と評価を誇る. 新進気鋭の編集委員を迎え,最新情報を盛り込み読みごたえ満点. 連載「視診で見抜く!皮膚疾患の診かた」「注目の新薬」など. 増刊号も毎回シャープな切り口と実際的な内容が大好評. 2色刷のビジュアルな誌面. |
2022年 Vol.110 No.2 2022-02-04
続・診断困難な痛みに向き合うケーススタディ
定価:2,860円(本体価格2,600円+税)
ねらい 志水太郎
◆見方を変えたら診断できた!
その痛み,線維筋痛症じゃないの 吉田常恭
痛いのは足だけか? 水本潤希
痛む場所,少し離れてみてみよう! 天野雅之
原因がよくわからないとされたときに疑うべき側胸部痛 和足孝之
わたし,コロナにかかってないですか 瀬山裕英,他
原因不明の腹痛の場合に,確認しておきたいコト 藤原元嗣,他
慢性疾患でフォローアップ中の患者の急性疾患の合併に注意! 佐々木陽典
痛みのあとに麻痺をきたした場合は支配神経を明らかにせよ! 飯野貴明,他
“Outside the box”を意識した腹痛の診療 鈴木智晴
身体症状症の診断で患者は治るのか? 清田雅智
何回も繰り返す痛みと発熱といえば… 鈴木富雄
もうこれ以上検査をしないでください 最後に頼るのはやはり… 宮上泰樹
一度違うと思っても… 保浦修裕,他
解剖から考える「指が曲がらない・関節が痛い」の知っておくべき原因 猪飼浩樹
現場でよくみられる医学的に説明がなされていない病態 高瀬啓至
◆試行錯誤のあとに診断にたどり着いた!
非典型なときこそ病歴は活きる 西村康裕,他
検査エラーも診断に活かせ! 三高隼人,他
「痛い」って,どれくらい痛いか数値化できます? 田宗秀隆
メトホルミンが著効する特発性浮腫とは 入山大希,他
ずっと痛いんです.なんとかしてもらいたいんです! 大武陽一
連 載
◎心電図は1枚の窓
術前の心電図にてBrugada型心電図を指摘された32歳男性 荷見映理子
◎注目の新薬
エンレスト®(サクビトリル/バルサルタン) 山本浩一,他
痛みを訴える患者は多い.総合診療科で外来,入院,救急の対応をしていると,あらゆる箇所の痛みを訴える患者に出会うことになる.早速その箇所をみにいき,訴えに耳を傾けながら観察し,触り,音を聴きながら,同時に全体の経緯や状況をつぶさに観察する.時に直観的に痛みの原因に気づくこともあれば,皮下の解剖を考えつつ,生理学や機能学の理解を駆使して痛みの原因を追究する必要が出ることもある.その診察の時間帯という切り取った時間のなかで解決できることもあれば,空間把握だけではなく時間経過という,もう1つの軸を追加することで4次元的な理解が可能になることでようやく原因を特定することもできる.
良質な診断を求める昨今のSociety to Improve Diagnosis in Medicine(SIDM)を中心とした世界的キャンペーンのテーマはsituativity(状況性)である.つまり医師の思考だけではなく,患者—医師関係,他職種とのかかわり,医学とは直接関係のない概念からの入力情報,一見すると診療とは直接関係のうすいと思われる患者に関する様々な情報,施設や土地など患者を取り巻く医療システム……,といった一切の環境因子がすべて協働したうえでの総力戦により診断の営為は成り立つということは,読者の多くの皆様が普段の診療で実感されていることではないかと想像する.時に診断“名”がつかないときも多々あり,それは視点が違うのか,またはカテゴリーとして未分化な状態の身体が発する表現が他覚的に観察されているだけということもある.このような未分化な状況との対峙も医師としては避けられない.
いずれにしても病悩のなかにあるのは患者であり,医師・医療者として,診断の有無にとらわれすぎず,診断をにらみながら,患者のその時点での生活の質や今後の生活についてどのように最善を尽くせるかということが最も重要な点である.
このような編者の真意をお察し下さっていたか,また何よりそもそも筆者の先生方の日常で錬磨された視点からの執筆が自然とそうなっていたということだと思うが,今回の20症例も,前回の特集(2020年5月号)に勝るとも劣らない珠玉の学びに満ちた20症例となっている.各先生の症例を拝読するにつけ,それぞれの先生方の臨床医としてのこだわり,診療への魂を感じ,読了後に自身の診療を振り返り,様々な思いや発想が頭のなかに渦巻いてしまう「後を引く」内容となっている.
本特集が皆様の明日からの診療に幅広く深くお役に立つことを願ってやまない.
獨協医科大学総合診療医学講座
志水太郎