産科と婦人科
精選された情報満載読者各位にとって欠かすことができない情報をタイムリーに提供. 「生殖おもしろ話」・「外界事情」・「青い血のカルテ」・「産婦人科診療 私のコツ」など連載も充実.
抜群の読みやすさオール2色刷り.一目でキーポイントがわかるレイアウト.
充実したラインナップ日常診療の場で即役立つ「増刊号」を年各1冊発行.日進月歩で激変する医学界のキーワードを読み解き,読者各位の壮大な負託に応えるべく「産科と婦人科」は微力を注ぎます.
2021年 Vol.88 No.6 2021-05-18
OC・LEPガイドライン2020年度版を読み解く
定価:3,190円(本体価格2,900円+税)
企画 髙松 潔
1.OC・LEPガイドライン2020年度版改訂の経緯とその要点 / 寺内公一
2.処方前の検査は? / 髙橋俊文
3.連続投与についての説明は? / 寺内公一
4.抗菌薬との併用時の説明は? / 伊藤文武
5.何歳まで投与可能か? / 江頭活子
6.PMSやPMDDに対する効果の説明は? / 小川真里子・他
7.骨に対する効果の説明は? / 髙松 潔・他
8.乳癌リスクの説明は? / 倉林 工・他
9.VTEリスクの説明は? / 若槻明彦
10.VTE予知にDダイマーなど凝固線溶系検査が有用か? / 篠原康一
11.子宮筋腫患者への投与時の説明は? / 樋口 毅
12.基礎疾患をもつ患者への投与時の説明は? / 樋口 毅
13.月経移動に使用する際の説明は? / 小川真里子・他
14.投与中,何を検査すればよいか? / 倉林 工・他
15.VTEの早期発見および重篤化を防ぐためのアルゴリズム / 若槻明彦
連載
若手の最新研究紹介コーナー
Ex vivo drug sensitivity test with a panel of cancer patient-derived spheroids of small cell neuroendocrine carcinoma of uterine cervix / 田中稔恵
症例
レボノルゲストレル放出子宮内システム(LNG-IUS)による子宮穿孔の1例 / 長島 香・他
難治性卵巣子宮内膜症性嚢胞に対し,腹腔鏡下嚢胞摘出術後再発,再度嚢摘出術後顕微受精で妊娠に至った不妊症の1例 / 徐 恒杰・他
欧米では,エストロゲンなどの女性ホルモン剤は“life design drugs”,つまり,自身の人生を自分でデザインすることのできる薬剤とよばれており,女性の活躍に大きく貢献してきました.なかでもエストロゲンと黄体ホルモンの合剤であるOCやLEPは,日本での適用とされている避妊や月経困難症以外にも,子宮内膜症・PMS/PMDD・尋常性痤瘡や多毛症など性成熟期女性が抱える多くの愁訴の改善に効果を有することから,わが国でも少しずつ普及してきました.
しかし,2013年末から2014年初頭にかけて起こったLEP製剤による血栓症リスクの報道は大きなインパクトとなり,それに伴い処方量は大きく減少してしまいました.OC・LEPにより得られるベネフィットはリスクと比較して大きいこと,また,OC・LEP服用による血栓症の問題は歴史的にもくり返し議論となってきたことは自明でしたが,「なんとなく不安」という気持ちが患者サイドのみならず,医療サイドにもあったのが事実でした.そこでOC・LEPに関する知識を整理し,リスクを正確に評価して,実臨床において安心・安全に処方ができることを目的として「OC・LEPガイドライン2015年度版」が策定されました.
それから5年が経過し,本ガイドラインの内容も浸透してきたように思われます.しかし,一方で,VTE問題が落ち着くにつれ,内容についての疑問や意見も出てきましたし,この間に日本でもいわゆる連続投与製剤としてフレキシブル投与や延長周期投与が可能な製剤が臨床に導入されるなど,OC・LEPを取り巻く状況も変化してきました.そこで今般,日本産科婦人科学会と日本女性医学学会が協同し,「OC・LEPガイドライン2020年度版」への改訂が行われました.
本特集号では,この新しいガイドラインを読み解くために,改訂に携わった先生方に各CQに対するAnswerの意味と解釈を詳細かつわかりやすく解説していただきました.ガイドラインでは記載しきれなかった部分を含めて,理解を深めていただければと思います.本特集号を通して,OC・LEPをより身近に感じていただき,さらなる普及が進むことによって日本人女性のQOLが向上することを期待しています.
(東京歯科大学市川総合病院産婦人科 髙松 潔)