産科と婦人科
精選された情報満載読者各位にとって欠かすことができない情報をタイムリーに提供. 「生殖おもしろ話」・「外界事情」・「青い血のカルテ」・「産婦人科診療 私のコツ」など連載も充実.
抜群の読みやすさオール2色刷り.一目でキーポイントがわかるレイアウト.
充実したラインナップ日常診療の場で即役立つ「増刊号」を年各1冊発行.日進月歩で激変する医学界のキーワードを読み解き,読者各位の壮大な負託に応えるべく「産科と婦人科」は微力を注ぎます.
2024年 Vol.91 No.1 2023-12-15
産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2023改訂のポイント
定価:3,190円(本体価格2,900円+税)
企画 寺内公一
Ⅰ.感染症
1 .クラミジア子宮頸管炎,淋菌感染症,梅毒,カンジダ外陰腟炎の診断と治療は? / 宮﨑博章
2 .性器ヘルペス,外陰尖圭コンジローマの診断と治療は? / 出口雅士
3 .腟トリコモナス症,細菌性腟症,骨盤内炎症性疾患(PID)の診断と治療は? / 早川 智
Ⅱ.女性医学
4 .低用量経口避妊薬(OC),低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)を処方するときの説明は? / 福原理恵・他
5 .SARS—CoV—2感染者におけるOC・LEP,HRTの使用の注意は? / 篠原康一
6 .子宮内避妊用具(IUD)・レボノルゲストレル放出子宮内システム(LNG—IUS)を装着する時の 説明は? / 川﨑 薫
7 .緊急避妊法の実施法とその留意点は? / 小澤伸晃
8 .月経前症候群の診断・管理は? / 小川真里子
9 .女性アスリートの診療上の留意点は? / 宮国泰香
10.ホルモン補充療法(HRT)の有害事象についての説明は?更年期の精神症状に対する薬物療法はどのように行うか? / 寺内公一
11.更年期障害に対する漢方治療・補完代替医療はどのように行うか? / 西尾永司・他
12.骨粗鬆症を予防するには? 閉経後骨粗鬆症の診断と治療開始,薬物治療は? / 五十嵐敏雄
13.骨盤臓器脱の診断と治療は? / 佐藤誠也
14.パートナーからの暴力を疑った時の対応は?性暴力を受けた女性への対応は?性虐待が疑われる女児への対応は? / 種部恭子
15.性別不合(性同一性障害)のホルモン療法の取り扱いは? / 中塚幹也
連 載
漢方よもやま話 第1回
漢方薬と私 / 能㔟充彦
弁護士が答えます!法律にまつわるあれこれ
人工妊娠中絶についての配偶者の同意(夫からのDVによる妊娠)の考え方は? / 秦 奈峰子
専門医・認定医をとろう!私の体験記 第7回
生殖医療専門医(日本生殖医学会) / 浦田陽子
症 例
Fetal vascular malperfusionの1例―胎児ヘモグロビン(HbF)とαフェトプロテイン(AFP)との関連― / 春石真菜・他
“Evidence—based Medicine(EBM)”という用語は,カナダMcMaster大学の内科医Gordon Henry Guyattにより1991年にはじめて論文中で用いられたとされているが,筆者が医師になりたての1990年代中頃は極東の島国にはいまだその影響は十分には及んでおらず,大半の医療行為は上級医の経験則に基づいて行われていたように思う.研修医2年目にある市中病院で働くことになった際に,論文をよく読みこんでいる勉強熱心な中堅の医師が上司に向かって「その医療行為にエビデンスはあるんですか?」と質問の矢を放ち,危うくケンカになりそうになったことを今でも鮮明に覚えている.
時は流れ,2008年に日本産科婦人科学会から「産婦人科診療ガイドライン産科編」初版が,2011年には「同婦人科外来編」初版が発刊された.女性医学分野に関していえば,2009年に日本産科婦人科学会・日本女性医学学会から「ホルモン補充療法ガイドライン」初版が,2015年に「低用量経口避妊薬,低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬ガイドライン(OC・LEPガイドライン)」初版が発刊された.これらのガイドラインはその後も3~5年間隔で改訂をくり返し,産婦人科診療のあり方を一変させたといえるのではないだろうか.各ガイドラインが専門医試験の出題範囲となっていることもあり,現代の臨床現場に生きる若い医師には,「何はともあれガイドライン」という態度がすっかり身についているようにお見受けする.「ガイドラインを鵜呑みにしてばかりいないで,自分でも論文をあたりなさい!」という指導は至極まっとうなものであり,そのような勉強態度はおおいに賞賛されるべきであるが,初心者向けの“Basic Manual”が存在することが医師・患者双方の安全性をおおいに高めていることは間違いない.
そのような意味で,「産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編」の最新版が2023年8月に発刊され,すでに日常臨床で使用可能になっていることは大変喜ばしいことである.一方で「ガイドライン」そのものは常に完成品であり,改訂の経緯およびその背後にある思想などは文面からは排除されていることも多い.本特集では,本ガイドラインの「感染症」「女性医学」分野の作成にかかわられたエキスパートの先生方に,そのような点に配慮した改訂点の概説をお願いした.若い先生方が「ガイドラインの行間を読む」際の助けとなれば幸いである.
(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科茨城県地域産科婦人科学講座 寺内公一)