産科と婦人科
精選された情報満載読者各位にとって欠かすことができない情報をタイムリーに提供. 「生殖おもしろ話」・「外界事情」・「青い血のカルテ」・「産婦人科診療 私のコツ」など連載も充実.
抜群の読みやすさオール2色刷り.一目でキーポイントがわかるレイアウト.
充実したラインナップ日常診療の場で即役立つ「増刊号」を年各1冊発行.日進月歩で激変する医学界のキーワードを読み解き,読者各位の壮大な負託に応えるべく「産科と婦人科」は微力を注ぎます.
2024年 Vol.91 No.12 2024-11-18
子宮内膜・子宮内腔とその異常
定価:3,190円(本体価格2,900円+税)
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2025年 Vol.92 No.1 2024年12月発売予定
特集/避妊と人工妊娠中絶 up-to-date
Vol.92 No.2 特集/遺伝診療・ゲノム医療の最新動向
Vol.92 No.3 特集/産婦人科領域のトランスレーショナルリサーチの展開
Vol.92 No.4 特集/産婦人科における素朴な疑問と解説(3)婦人科続編
Vol.92 No.増刊号 特集/イラスト・写真でコツがわかる!産婦人科小手術&低侵襲手術
Vol.92 No.5 特集/ホルモン補充療法ガイドライン2024年度版改訂のポイント
Vol.92 No.6 特集/胎盤を多角的に理解する
Vol.92 No.7 特集/新時代の若手キャリアをつくる−産婦人科教育の最前線−
企画 五十嵐敏雄
Ⅰ.子宮内膜の基礎
1.子宮内膜の月経周期 / 奈良亮謙・他
2.子宮内膜におけるアポトーシス / 谷口文紀
3.子宮内膜症の病因―逆流経血と腹腔内NK細胞の免疫応答― / 山本槙平・他
4.子宮内膜の妊娠性変化/免疫寛容 / 村田紘未・他
5.子宮内膜ゲノムに注目したがん化メカニズム / 髙橋宏太朗・他
Ⅱ.子宮内膜・子宮内腔の異常と治療
6.子宮内膜症における正所性内膜 / 中島真理恵・他
7.慢性子宮内膜炎の診断と治療 / 山中彰一郎・他
8.ARTにおける子宮内フローラと子宮内膜受容能検査(ERA) / 京野廣一・他
9.子宮内膜菲薄化状態における着床障害とその治療 / 久須美真紀・他
10.不育症・不妊症における子宮鏡検査で治療すべき病変 / 澤田祐季・他
11.閉経期ホルモン療法における黄体ホルモン製剤と子宮内膜 / 寺内公一
12.妊娠高血圧腎症と子宮内膜の脱落膜形成の関連 / 根本一成・他
13.妊孕性温存手術後の癒着胎盤,RPOC / 真壁 健・他
14.子宮内膜異型増殖症・子宮体がんのリスク因子と予防 / 河原井麗正・他
連 載
漢方よもやま話 第12回
葛根湯 / 能㔟充彦
弁護士が答えます!法律にまつわるあれこれ
外国人の患者さんの受診が増えて対応に困っています.診療を断ってもよいでしょうか? / 秦 奈峰子
専門医・認定医をとろう!私の体験記 第18回
日本骨粗鬆症学会認定医(日本骨粗鬆症学会) / 粒来 拓
症 例
分娩時に発生した肛門の損傷を伴わない直腸腟裂傷の1例 / 澤本康平・他
子宮内膜は胚の着床を目的とし,着床成立後は脱落膜として妊娠維持に寄与する.妊娠が成立しないと黄体が2週間の寿命を迎えて,子宮内膜は黄体からのプロゲステロンの分泌とその後の分泌低下を受けて細胞死を起こし,月経血として剝がれ,やがてまたそこに新しい子宮内膜が再構築されるというサイクルをくり返す.月経はサルとヒトにしかないとされ,毎月新しいものが形成されるような臓器はほかにない.子宮内膜はエストラジオールの影響下に増殖し,プロゲステロンの影響下に過度の増殖が抑えられるが,その働きの理解には子宮内膜におけるエストロゲンやプロゲステロンの受容体の発現周期を知ることが大切になる.剝がれた子宮内膜は月経血として排出されるだけでなく,卵管を経由し腹腔内に逆流してマクロファージやナチュラルキラー細胞の貪食を受ける.原因が貪食細胞の異常なのか,逆流した子宮内膜の細胞死が不十分で貪食を受けないのかについて結論は出ていないが,逆流子宮内膜の貪食回避は子宮内膜症発症の一因となる.子宮内腔でなく腹腔内に異所性に残った子宮内膜は卵巣やダグラス窩腹膜に染み込んでやがてまるで腫瘍のように振る舞うこともある.
着床の際,子宮内膜は凹凸の少ない適度な厚みを必要とし,胚という異物を免疫寛容で受け入れ,侵入してくる絨毛に反応して自らも変化する.子宮内膜の異常,腫瘍形成や子宮内膜異型増殖症,慢性子宮内膜炎や子宮内腔細菌叢の異常,免疫寛容異常などは着床能低下をきたしてしまう.また子宮内膜症は子宮内膜が異所性にある疾患で子宮内膜自体の疾患ではないとされてきたが,子宮内膜症を発症する症例の子宮内膜は子宮内膜症を発症しない症例の子宮内膜と比較して蛋白質発現が異なって着床率が低く,子宮内膜の疾患であるという見方もある.さらに,子宮内膜の過度な肥厚はAUBや過多月経,子宮内膜異型増殖症や子宮体がんと関連する.女性にとって月経で子宮内膜が剝がれることは大切で,剝がれず長期にエストロゲンに曝されると異常な細胞が出現してくるのである.
子宮内膜は産婦人科領域において臨床的に大変重要な部位で研究対象としても魅力的である.本特集が読者の臨床や研究に役立ち,やがて患者がその恩恵にあずかることを期待してやまない.
(帝京大学ちば総合医療センター産婦人科 五十嵐敏雄)