小児科診療
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2021年 Vol.84 No.3 2021-02-12
災害時の小児医療〜災害の経験を今後に活かす〜
定価:3,080円(本体価格2,800円+税)
序 文 和田雅樹
Ⅰ.東日本大震災,その後
日本全体での災害対応 /加藤琢真
日本小児科学会の災害対応 /井田孔明
災害医療と小児周産期医療の連携 /岬 美穂
周産期センター新生児科の災害対応 /大木 茂
災害に対する小児医療システム /呉 繁夫・他
災害に対する周産期・新生児医療システム /松本 敦
一般病院の災害対応 /渕向 透
クリニックにおける災害対応と行政との連携~情報発信と心のケア~ /川村和久
Ⅱ.原発事故と広域避難,その後
東日本大震災と福島県郡山市の子どもたち~震災の教訓を無駄にしない社会を~ /菊池信太郎
子どもたちの健康状態,疾病構造の変化 /細矢光亮
福島の小児医療の変化 /桃井伸緒
福島の周産期医療の変化 /本田義信
NICU卒業生交流キャンプ『すくすくキャンプ』 /増山 郁・他
Ⅲ.様々な災害,その後
熊本地震,その後 /川瀬昭彦
大阪北部地震,その後 /古家信介
胆振東部地震,その後 /土畠智幸
西日本豪雨災害,その後 /塚原紘平
令和元年台風被害,その後 /戸石悟司
症例報告
A群溶血性連鎖球菌による菌血症をきたし化膿性閉鎖筋炎を発症した6歳男児 /金井宏明・他
乳房腫瘍の治癒後に対側に乳房腫瘍が再発した思春期例 /野口杏子・他
和田雅樹 /東京女子医科大学母子総合医療センター新生児医学科
東日本大震災と福島原発事故から10年が経ちました.この大災害は小児科領域における災害医療体制に多くの課題を投げかけました.いまだその復旧・復興途上といえますが,小児医療提供体制の見直しや災害医療と小児医療の連携などがすすめられてきています.一方,その後も熊本地震をはじめとした直下型地震や豪雨災害,大型台風災害など甚大な被害をもたらす災害は毎年のように発生し,その都度,施設避難や医療的ケア児への対応,災害時連絡網などの小児医療に関連した新たな課題が浮き彫りになっています.
本特集では,東日本大震災と福島原発事故をはじめとした大災害が小児・周産期医療にどのような影響を与えたのか,その後どのような対策が行われてきたのかをまとめていただきました.第Ⅰ章では東日本大震災の地震,津波被害に対する日本小児科学会や小児・周産期医療の災害医療システムの対応と変化について示していただきました.さらに,被災県の小児・周産期医療システム,地域の病院・診療所が大震災によってどのような影響を受け,変化したのかをまとめていただきました.第Ⅱ章は福島原発事故による放射線被害と広域避難についての報告です.福島の子どもたちの健康や小児・周産期医療への影響を,現在の状況も含めてまとめていただいています.また,「フクシマ」をもっと知ってもらおうという思いから始まったNICU卒業生の「すくすくキャンプ」は,参加家族とスタッフである医療者,ボランティアに確かな変化をもたらしているばかりか,その活動は様々な方面の注目を集めています.そして,第Ⅲ章ではその後の様々な大規模災害として,熊本地震,大阪北部地震,北海道胆振東部地震,西日本豪雨災害,令和元年度の台風被害を取り上げています.
東日本大震災を中心として,大規模災害を直接経験し,対応にあたってきた方々が,災害に対してどう向き合ってきたか.その貴重な経験を皆で共有させていただくことは,今後の小児の災害医療対策を行っていくうえでの道標になると信じています.
寺田寅彦氏は「天災は忘れた頃にやってくる」と表現しました.しかし,近年の大災害は,誰にでも,どこにでも,忘れる前にやってきます.その時に対応できるように,少しでも被害を軽減し,子どもたちを守っていけるように,平時からその準備をし,次の災害に備えることが,小児医療にかかわる私たちの使命だと思っています.