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小児科診療

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2022年 Vol.85 No.4 2022-03-11

サイトカインストームと小児疾患

定価:3,080円(本体価格2,800円+税)

冊 

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掲載論文

序文  /金兼弘和
Ⅰ.サイトカインストームの基礎
サイトカインとは  /山下 基 
サイトカインストームの概念  /森 雅亮 
サイトカインストームの臨床像  /西村謙一 
サイトカインストームの検査  /岡本圭祐 
Ⅱ.サイトカインストームが関与する疾患
一次性血球貪食性リンパ組織球症  /八角高裕 
ウイルス関連血球貪食性リンパ組織球症  /坂本謙一 
悪性腫瘍関連血球貪食性リンパ組織球症  /加藤稚子・他 
CAR-T療法に伴うサイトカインストーム  /神谷尚宏 
小児リウマチ性疾患に伴うマクロファージ活性化症候群  /水田麻雄 
自己炎症性疾患に伴うサイトカインストーム  /西小森隆太・他 
神経疾患に伴うサイトカインストーム  /黒田文人 
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)  /清水正樹 
川崎病と小児多系統炎症症候群(MIS-C)  /廣野恵一 
Ⅲ.サイトカインストームに対する治療戦略
免疫化学療法  /澤田明久 
生物学的製剤と分子標的薬  /岩田直美

症例報告
虫垂炎疑いで紹介された処女膜閉鎖症の1例  /寺尾紗世・他 
9歳時に画像検査で判明した腎機能低下を伴う腎回転異常の1例  /大田みずほ・他 

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ねらい

サイトカインストームと小児疾患
金兼弘和  /東京医科歯科大学小児地域成育医療学講座

 最近サイトカインストームという言葉を聞くことが増えたのではないだろうか.サイトカインストームとは血中に炎症性サイトカインが放出され,悪心,悪寒,倦怠感,頭痛,発熱,頻脈,血圧低下などの多彩な症状を起こす現象であり,ときに致死的となる.検査値の異常として血球減少,炎症反応,肝機能や腎機能障害などを示す.様々な疾患に伴い発症するが,小児疾患においてもまれならずサイトカインストームを合併する.昨今は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の主たる病態としてサイトカインストームがより注目されている.
 本稿ではまずサイトカインストームの基礎的理解のために,まずサイトカインとは何かを学び,サイトカインストームの概念,サイトカインストームにおける臨床像と一般検査値,サイトカインの測定方法についてそれぞれ解説する.この章からサイトカインストームの理解を深め,診断法についても学んでもらいたい.
 次にサイトカインストームがかかわる様々な小児疾患を取り上げる.家族性血球貪食性リンパ組織球症(familial hemophagocytic lymphohistiocytosis:FHL)としても知られる一次性HLHと様々な二次性HLHの病態について解説する.まずは現在も世界中でパンデミック感染をきたしているCOVID-19を取り上げ,サイトカインストームからその病態を理解する.EBウイルス関連を中心とする様々なウイルス関連HLH,リウマチ性疾患に伴うサイトカインストームとしてのマクロファージ活性化症候群,自然免疫系の異常を伴う自己炎症性疾患について解説する.COVID-19に関連して小児多系統炎症症候群(MIS-C)が昨今注目されており,川崎病との異同が議論されている.悪性リンパ腫などの悪性腫瘍に関連するHLHに加えて,難治性がんに対する新しい治療として注目されているCAR-T療法ではサイトカインストームは必発である.さらに神経疾患とサイトカインストームに関する知見についても解説する.
 サイトカインストームに対する基本的治療はデキサメタゾン,エトポシド,シクロスポリンAによる免疫化学療法であるが,それ以外の免疫抑制薬も使用され,サルベージ療法としての造血細胞移植についても解説する.サイトカインストームにおいてキーとなるサイトカインの働きを直接阻害するような生物製剤や分子標的薬も近年数多く開発され,病態に応じて使い分けることによって,優れた治療効果が期待される.
 本号を一読することによって,サイトカインストームがかかわる様々な小児疾患を理解することの助けとなり,治療成績の向上に期待し,特集を組んだ.明日からの診療に役立つことを祈念する.

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