小児科診療
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2021年 Vol.84 No.8 2021-07-13
発生学から考えてみよう!小児の先天疾患
定価:3,080円(本体価格2,800円+税)
序 文 /山岸敬幸
Ⅰ.総 論
人体発生概論 /山田重人
先天異常総論 /湊川真理・他
Ⅱ.各 論
頭蓋縫合早期癒合症,口唇口蓋裂 /坂本好昭
水頭症,髄膜瘤,二分脊椎 /三輪 点
虹彩欠損 /野田英一郎
耳介,外耳の異常 /大河内真之・他
脊柱側彎症 /船尾陽生・他
食道閉鎖,肺嚢胞性疾患:CPAM /渕本康史
先天性心疾患 /八代健太
血管輪,肺動脈スリング /福島直哉・他
横隔膜ヘルニア,臍帯ヘルニア /岡﨑任晴・他
十二指腸狭窄(輪状膵) /牧 ゆかり・他
膵胆管合流異常症 /山田洋平
先天性腎尿路異常,嚢胞性腎疾患 /西 健太朗・他
水腎症,総排泄腔外反 /浅沼 宏・他
性分化疾患 /天野直子
鼠径ヘルニア,陰嚢水腫,精索水腫 /藤村 匠・他
鎖肛,Hirschsprung病 /下島直樹・他
山岸敬幸 /慶應義塾大学医学部小児科
「発生学」とは,受精卵が胚を形成し,胚が組織や臓器を形成する「からだの形づくり」を科学し,構造と機能が獲得される過程を識るための基礎的な学問です.学生の頃に複雑な形態形成を覚えるのに苦労して,その後まったく勉強していない方もいらっしゃるかもしれません.一方,単細胞の受精卵から様々な細胞の分裂,増殖,移動,分化や相互作用によってからだの組織や臓器が形づくられていく過程に生命誕生の神秘を感じ,トリコになった方もいらっしゃるでしょう.
「発生学」の分野では毎年多くの研究成果が生まれ,教科書に新たな記述が加えられています.ヒトの細胞や組織・臓器の実体はあまりに複雑すぎて,人類の理解はいまだ自然が生み出した芸術ともいえる「からだの形づくり」の神秘をすべて解き明かすことには追いついていません.しかし,研究の進歩により,ヒトの発生そのものを扱う生殖医療や,発生学を応用して発展する再生医療の領域など,社会的に議論の的となることも多くなっています.私たち医療者にとって実臨床はもちろん,社会医学・倫理にもつながる重要な学問です.
特に小児科では,多くの先天異常の患者さんを診療します.その中でも,様々な臓器に起こる先天疾患は,ヒトの発生過程における特定の領域の異常,まさに「からだの形づくり」の異常により起こるものです.したがって,発生学の知識を導入することによって,このような先天疾患の診断,治療に深みが増します.疾患の成り立ちを科学的・理論的に考えることにより,診療の質は確実に上がり,新たな診断・治療のアイディアにつながる可能性も秘めています.
そこで今回,特集として,「発生学から考えてみよう! 小児の先天疾患」を企画しました.総論には発生学の知識の復習およびアップデートとして,まず正常な個体発生について,あのベストセラー教科書「ラングマン人体発生学」の翻訳も手掛けていらっしゃる基礎医学の山田重人先生に,たくさんの図を用いてわかりやすく,かつ簡潔にオーバービューしていただきました.また異常な個体発生,すなわち先天異常の発症機序の基本概念について,小児科医で遺伝医である古庄知己先生に解説していただきました.各論の項目は,小児科で比較的よく見かける先天疾患について,最前線で診療されていらっしゃる小児科および外科系のエキスパートの先生方にご執筆いただきました.各章,前半は疾患の概念と発生学的な解説,後半は診断・治療の概要を疾患の成り立ちから結びつけていく構成になっています.その結果,正常な臓器の発生を理解し,その異常によってどのように先天疾患が発症するかを考えて診療する,基礎と臨床を小児領域横断的につないだユニークな1 冊が完成しました.このチャレンジングな企画を実現していただいた「診断と治療社」編集部の皆様,ご執筆の先生方に心より感謝します.
では,疾患の本質に迫る「からだの形づくり」から考える診断と治療を,ぜひご堪能ください.